発達障害と脳④〜脳のコントロール機能の持続法
2018- 03-19 更新

はじめに
発達障害の子供と関わっていると、落ち着いた行動がとれるときと、とれないときの差が激しいことに気付くはずです。好きな動画に集中して見入っていたと思ったら、突然飛び起きて騒いだり、大声を出したりと本能的な行動が出ることもよくあります。
ここでは、この落差が生じる原因を説明するとともに、落ち着きのある行動を持続させるためのトレーニングをご紹介します。

働いている脳の部位によって行動に差が生じる
障害を持つ子供の行動は、そのとき脳のどの部位が働いているかによって決まります。落ち着きのある行動がとれているときに働いているのは「前頭連合野」。ここは、合理的な意思判断や行動を司る部位です。理性が働くため、集中力を必要とする勉強や細かなお遊戯、手遊びが可能です。落ち着いて人の話を聞き、正常なコミュニケーションをとることもできるでしょう。
ところが、「大脳辺縁系」や「脳幹」が優位になると、大声を出したり意味もなく走り回ったりといった、落ち着きのない行動が現れます。下位脳(大脳辺縁系・脳幹)が優位になることにより、反射的な行動が出ている状態だと言えるでしょう。この状態のときに、会話をしようとしても難しい場合が多くなります。
コントロール機能のスイッチを入れにくいのが発達障害
健常な子供でも、脳機能の差によって行動の波は多少あります。しかし、障害を持つ子は、前頭連合野の働きが弱いほど波が大きく、落差が激しいのです。
一時的に落ち着いている時間があったとしても、ひとたび下位脳が優位になると、自分の力で落ち着きを取り戻すことが困難です。
障害を持つ子供が社会的な生活を送るためには、周囲にいる大人が状態の変化に気を配り、理性優位の状態でなくなったと感じたら、外的にスイッチを入れ替えて平静状態へと導く配慮が必要です。
家庭では落ち着きのある行動を持続させる訓練を
健常な子供の場合、自分でスイッチを切り替えるのが難しいのは、乳児を過ぎたあたりまでだといわれています。このコントロール機能は、人の体に本来備わっている機能であるため、障害を持った子であっても訓練をすることで一定レベルまでは回復が見込まれます。
自宅にいるときでも外出先同様に、節度ある行動を意識させ、落ち着いた状態を持続させるトレーニングをしていくと良いでしょう。
参考までに、習慣化すると良い行動をいくつかあげてみました。
- ・日常的な動作を短い時間でこなす
- 手を洗ったり、着替えをしたりといった日常的な動作を最短の時間でこなすように意識させます。ひとつのことを終わらせるまで、他に注意が向かないように集中して取り組ませましょう。
- ・座っているときに背もたれを使わせない
- 椅子にじっと座るトレーニング中に、あえて背もたれを使わせず、背筋を伸ばした状態を一定時間維持させるとより有効です。
- ・目的を持った行動をする時間を増やす
- 自宅にいる間も、DVDや本を活用して目的を持った行動をさせる時間を増やしましょう。頭を使い、自分の行動を制御するトレーニングになります。
また、外出先で落ち着きがなくなってしまったときには、手を開いて握るグーパー運動などの軽いエクササイズをさせてみてください。脳のスイッチが切り替わって、落ち着きを取り戻すことがあります。言葉で言って聞かせても落ち着かないことがほとんどなので、頭ごなしに怒らず冷静に対処しましょう。
本能的な行動を上手に制御できると、外出の心理的負担が軽くなります。外にでて、家族以外の人と関わりを持つことは、子供の成長に大きなプラスになるはず。根気強くトレーニングを続けて、改善を目指していきましょう。
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